色彩の尽きぬところ 7
この地上では、光を完全に吸収しつくしてしまうような完全無欠の黒という色を、実際に見ることはできません。
しかし、すべての波長の輻射を完全に吸収する物体として、完全黒体というものが仮定の上では存在しています。
そのために、この黒体はある決まった温度では、すべての波長で最大の熱放射をする物体であるともされています。
古代ギリシャの思想では、白と黒、すなわち光と闇がすべての色のはじまりでしたが、量子論では、黒体という理想的な黒色物体は、すべての光の窮極であるとともに、光の放射の根源ともされているのです。
すべての色の尽き果てた黒体が、すぺての色の出発点でもあるという意味では、黒と白でさえ本質的に同じもので、色という現象において結果が逆になるにすぎません。
しかも、完全な光の欠除という客観的条件が、人間に完全な黒の感覚をもたらすとはかぎらないというところが、色というもののいかにも不思議なところです。